「神のかたち」で生きる霊性入門 1月ー私達が目指す"目的地"とは

いのちのことば社『 月刊 百万人の福音 BIBLE&LIFE 』にて2023年1月から1年間連載を担当しております。

連載タイトルは、「神のかたち」で生きる霊性入門
いのちのことば社様から許可をいただきまして掲載いたします。『 月刊 百万人の福音 BIBLE&LIFE 』は様々な執筆者の方々の有益な記事や情報が満載です。最新号にてぜひお買い求めください!


※掲載された記事については、PDFの記事を御覧ください。下記は編集前の原文です。紙面の都合上省略された文章が原文には含まれています。編集者の方の尽力によって読みやすくなった文章、また原文のままの文章もどちらも、楽しんで頂けるかと思い、両方を残してあります。


神のかたち

人生には、袋小路と思えるような場面があります。仕事がうまくいかなかったり、信頼していた人との関係が壊れたり。結婚生活の問題、子育て、家族の病気や介護で度重なる課題に直面し、重い荷物を延々と運んでいるような気持ちの方もいらっしゃるでしょう。

教会生活はと言うと、伝道活動に子供のイベント、ピアノ奉仕に食事の係り、といくつもの役目を抱えて、自分の信仰がどうなっているのか考える余裕もないまま、走り続けている。

この方向で良いのだろうか、違うとしてもどこに向かえば良いのだろうか、と立ち止まる。自分自身の生き方、信仰の道標を探している、そのような方が納得と確信を得て、次の一歩を進める手がかりになればと思います。

目的地

人が抱える問題は様々です。どこからどう手を付けてよいか分からない。分からないので、悩みが深くなります。怒りっぽくなったり、気持ちが塞ぎ込んだり、眠れなくなったり、人間関係から離れていく。

私が人とお話する時、どのような問題でも、最初に確認することがあります。それは、答えはその方自身の中にあるということです。心のなかにある「なにか違う」という感性に信頼し、よく耳を傾けるところから、始まります。

怒りが消えない自分、悲しみから逃れられない自分、信仰者として理想的ではない、と否定している自分の声をきちんと聞く。なぜなら、心の中の消えない声が、行くべきところを知っているからです。本当の自分の声が何なのか受け取るところから、問題の整理が始まります。

神のかたち

キリスト教的観点では、人は神のかたちとして創造されました(創1:27)。ラテン語ではImago Deiと言われます。なぜ最初にこのテーマをお話しするかというと、「神のかたち」は信仰者にとって、どこを目指すのか、という目的地を考える大切な基準になるからです。

「神のかたち」とは何を指すのか、キリスト教神学の歴史から、実体的解釈、機能的解釈、関係的解釈という三つの主要なアプローチがあります。

実体的解釈とは、愛や聖さなど、神のあり方が人に反映した道徳的な「かたち」です。

機能的解釈とは被造物の秩序の中で神を示す存在として生きる、社会性・関係性におけるあり方としての「かたち」。

関係的解釈とは、三位一体に示されるように、神は関係性そのものであり、神のかたちとは神との関係性の中に生きることである、とする考えです。

難しい話になりましたが、伝えたいことは、私たちの問題は大きく自分自身の問題か、周りの人・社会との関係性か、神との関係の問題か、に分類されるということです。

具体例

感情のコントロールができない、依存心が高い、などは実体的解釈の問題になるでしょう。自分自身が「当たり前」と思っている立ち振舞い、考えのパターンを客観的に見直し、神のあり方に向けてどのように成長するかが一つの目標になります。

教会の奉仕で家族との関係に摩擦が起きている、や職場で信仰者として生きることに課題を感じている、というのは機能的解釈に当たります。神の聖さ、愛、義、憐れみ、真実、誠実を調和の取れたかたちで関係性の中に実践することが課題になります。

「神さまがよくわからない、見えない」という相談は神との関係の問題になります(関係的解釈)。罪悪感や恐怖で信仰そのものが消えそうになっている方がいます。

状況によるのですが、これをしなければ、信仰者として怠けている、熱心ではないと言われる、というような恐れが信仰生活の中心になっているならば、本当にそれは神から出ていることなのか、立ち止まって考える時でしょう。

また大きな病気や死別など、深い悲しみで押しつぶされている方もいらっしゃるでしょう。悲しみを受け止めていく過程は時間がかかりますから、どうか焦らずに。悲しむ心を持っているあなたは、大きな愛を持っている人です。

これらの問題は一人で取り組むことが難しい場合があります。牧会カウンセラーやスピリチュアルディレクター、クリスチャンカウンセラー、他の教会の牧師やクリスチャンなど、他者から力を借りることは良い方法です。

神のかたちを、私たちの人生に形成することは、大変な作業です。多くの方が、信仰の悩みに直面する時、自分の信仰が後退したのだろうかと言いますが、それは違います。

起きない方が良い試みが、この壊れた世界には溢れています。でも、それはあなたを破壊したりはしません。神の手の中にあるときに、苦しみ悩みは、私たちを神の「かたち」に変える道筋になります。それは、新しい生き方の始まりであり、自由になる道です。




※出版権の関係により、無断で不特定多数の方に配布しないようお願い申し上げます。引用の際には出典、『百万人の福音 Bible & Life』いのちのことば社※月号、を明記下さい。