「神のかたち」で生きる霊性入門 4月ー「察して」をやめるー伝えることに責任を持つ

いのちのことば社『 月刊 百万人の福音 BIBLE&LIFE 』にて2023年1月から1年間連載を担当しております。

連載タイトルは、「神のかたち」で生きる霊性入門
いのちのことば社様から許可をいただきまして掲載いたします。『 月刊 百万人の福音 BIBLE&LIFE 』は様々な執筆者の方々の有益な記事や情報が満載です。最新号にてぜひお買い求めください!


※掲載された記事については、PDFの記事を御覧ください。下記は編集前の原文です。紙面の都合上省略された文章が原文には含まれています。編集者の方の尽力によって読みやすくなった文章、また原文のままの文章もどちらも、楽しんで頂けるかと思い、両方を残してあります。


「察して」をやめるー伝えることに責任を持つ

「神のかたち」を自分自身の生活の中に形作ってゆく、というテーマでお届けしています。今回は自分自身を表現することの大切さについて、一緒に考えてみましょう。

長年家族、夫婦の問題を扱っているプリペアー・エンリッチJapanの西岡まり子先生が次のように仰っていました。

「コミュニケーションはキャッチボールです。相手が受け取ることが出来る球を投げましょう。ドッジボールではいけません。」

なるほど、と思いました。夫婦関係に限らず、私達のコミュニケーションは時に、相手とのやり取りを通して結論に至ろうとする対話ではなく、どちらが正しいか、どちらが優位かを示そうとする「対決」になっています。

あなたの意思、そして願いはあなたの形です。自分自身の人格と霊性を確認する過程です。自分の意思を伝えることの価値と責任、伝える方法について、2つのことをご紹介します。

1. 意思表示の大切さについて「露呈(開示)の法則」ー『境界線』から

『境界線』ヘンリークラウド/ジョン・タウンゼント著に「境界線の十の法則」という章があります(5章)。

法則10:「露呈(開示)の法則」

「露呈の法則とは、あなたの境界線は他者から見え、関係の中で彼らに言葉で伝えられるべきであるということです。...私たちは、恐れのために境界線の問題を、暗闇の中に隠してしまうことがあります。それは、サタンに攻撃の機会を与えます。

...本当の愛への道は、境界線をオープンに伝えることです。」

私達の願いは、私が誰で、何者であるかということを示しています。

察してください、汲み取ってください、という精神は日本文化の中では多く期待されますが、これは解決するべき方向性を混乱させます。まず、何を伝えたいのか曖昧であるため、誤解が起きるということ。もう一つは、本人の問題が見過ごされるということが挙げられます。

例を挙げましょう。「(夫婦関係で)あなたのパートナーにどのようなことを期待しますか?」と質問すると、このような答えが返ってきます。「そうですね、私のことを不安にせず、思っていることを察してくれて、大切にしてくれることです。」「大切にしてくれる、とは?」「私が必要と思った時に、メッセージをくれて、私の願う答え方をしてくれる...。」「可能だと思いますか?」「いいえ。」

願いが思った通りにならないために、相談に来ていることは明確なのですが、このやり取りをすることは大切です。願いを言葉にすることで、自分自身が見えるのです。

現実的な願いか、謙遜さがあるか、相手のことを配慮しているか、願いが独りよがりになっていないか、自分に求められたら出来ないことを、相手に一方的に願っていないか。

察してくれない環境や誰かについて不満を持っているとしたら、その責任のボールは、問題を明確に伝えるまで、当人の側にあります(高齢者や幼児、精神や身体にハンディキャップがあり、意思表示の能力が十分でない場合は別です)。

伝えることで状態が悪化する方、また悪化する可能性がある方にとっては、ご自身がいらっしゃる環境や関係性について考える機会になります。状況と自分自身の願いが相容れない状況にあるとき、どのような人たちに囲まれ、どのように生きたいのか、考えてみてください。

『境界線』は、20年程前に書かれた本ですが、信仰の面でも非常に良い指針が記されている名著ですので、ぜひ一度ご覧になってください。

2.アサーティブネスー健全な意思表示の方法

伝え方がわからない、という声をよく耳にします。なるほど、伝え方が分からず、ボールを持ったままにしたり、投げたかと思えばドッジボール。分かりにくい伝え方、変化球ばかり投げる人もいます。

アサーティブネスは、自分と相手の意見を尊重しながらコミュニケーションを取る方法です。適切な言葉、言い方で自分の意見を表現します。

「愛は礼儀に反せず」(Iコリ13:5)と聖書にありますが、まさに、礼儀を実践するためのコミュニケーション方法です。次のようなことを心がけてみてください。

・アイ(I,私)メッセージを使う。

「私」を主語にして話してみましょう。「あなたは~してくれない」「みんながこう言っている」という言い方は、伝え方が曲がります。伝えたい事があるのは「私」です。「私」の願いとして、なにをして欲しいのか明確に意見を伝える必要があります。

例えば次のとおりです。「私は~してもらえると、嬉しいです」「私は~されると悲しく感じます。違う方法、言い方をお願いできますか。」

・建設的、肯定的な言葉を用いる。

アサーティブな会話では、自分の意見を相手が受け取りやすいように伝えます。そして相手の意見も丁寧に扱います。理解できない、意見が違うからと言って相手を攻撃したり、否定的な態度をとらないように気をつけましょう。

相手に敬意を払い、丁寧にお願いする。

協力や信頼関係が必要な関係では、相手の意見やペースを尊重することが長期的により深く強い関係を生み出します。

意見が違う場合、同意するかしないか、それぞれに選択の自由があります。私達が納得できれば同意すればよいのであり、出来なければ同意する必要はありません。しかし敬意を払う必要はあります。敬意を払う、とは、相手の意見を尊重し、理解しようとする姿勢です。

良いか悪いか、正しいか正しくないか、と仕分けされる世界観から離れ、異なる考え方、感じ方があることを理解する空間、それぞれの考えと生き方に息をする空間があること、それが互いの意見を尊重するということです。

アサーティブネスについては行動療法やビジネスの世界で多くの情報やトレーニングがありますので、興味がある方はぜひ調べてみてください。

あなたの願い、選択、意思はあなたに与えられた、神のかたちの一部です。神の光の中で自分の意思と願いの中身を点検すること、そして周囲がキリストを感じるように表現すること。

簡単ではありませんよね。しかし、取り組む価値のあることです。

あなたの意思が神のかたちとなって示されるとき、それは世の光、周りの方々への祝福となるでしょう。




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